親子関係におけるアクティブリスニング(積極的傾聴)の重要性。子どもが本音を話せる「聴き方」とは?
2026.05.27
モンテッソーリ教育とレッジョ・エミリア・アプローチの研究者であり、ベストセラーの育児本「自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方」の著者、島村華子さんの連載コラムです。
1.アクティブリスニングとは?
2.アクティブリスニングの効果
3.アクティブリスニングの実践ポイント
4.終わりに
アクティブリスニングとは?
親子関係でとても大切なのは、子どもが「自分は愛され、大切にされている」と感じることです。たとえ意見が合わない時も、まずは「否定されずに聞いてもらえる」という心理的な安心感があってこそ、子どもは本音を話せるのです。この安心感を支える鍵が、アクティブリスニング(積極的傾聴)です。
アクティブリスニングとは、文字通り「積極的に相手の話を聞く」こと。ただし、単に黙って能動的に聞くこととは違い、相手の話の内容だけでなく、その背景にある気持ちや考え、視点に寄り添い、理解しようと努める態度を指します。親子の会話では、つい「それは違う」「こうした方が良い」と正したり、説教したりしたくなるものです。しかし、アクティブリスニングでは、自分の意見や気持ちは一旦脇に置き、まずは相手の立場に立って聴くことを大切にします。
アクティブリスニングの効果
アクティブリスニングの効果としてまず挙げられるのは、話し手にとっての安心感です。自分の話を途中で否定されたり、非難されたりしないとわかっていると、自然と心を開きやすくなります。最後まで聞いてくれることがわかると、「また話を聞いてもらいたい」と思えるようになり、この体験の積み重ねが、親子の信頼関係をより強くしていきます。
一方で、聞き手にとっても大きなメリットがあります。相手の話を自分の物差しだけで評価せずに、相手の立場で考えようとする練習ができるため、相手への理解が深まります。子どもがどのような気持ちでその言葉を選んだのか、どんな背景があったのかを知ることで、誤解やすれ違いも減りやすくなります。
例えば、学校で友達とけんかをした子どもが「もう学校行きたくない!」と言ってきたときに、「行きたくないなんて言わないの!」と頭ごなしに叱ってしまうと、子どもは「どうせ話しても無駄だ」と感じ、心を閉ざしてしまいます。けれども、「そうなんだ。学校に行きたくないほど嫌なことがあったんだね」とまず気持ちを受け止めてあげると、「わかってもらえた」と感じ、安心して話ができるようになります。その後、「どんなことがあったのか教えてくれる?」と続けることで、子どもは自分の中のモヤモヤを整理しながら、親と一緒に解決の糸口を探していくことができるのです。このように、アクティブリスニングは、親子の会話をただのやり取りではなく、互いを理解し合う大切な時間に変えてくれます。
アクティブリスニングの
実践ポイント
アクティブリスニングを実践するには、いくつかのポイントを意識すると効果的です。まず大切なのは、相手の話をただ聞き流すのではなく、きちんと受け止めていることを伝えることです。そのために役立つのが、「反復」、「言い換え」、「明確化」、「要約」の4つの方法です。
「反復」は、子どもの言葉をそのまま繰り返す方法です。「学校に行きたくないんだね」と言葉を返すことで、「ちゃんと聞いてくれている」と子どもに伝わります。
「言い換え」は、子どもの話を自分の言葉でまとめ直して伝えることです。「つまり、友達とけんかして嫌な気持ちになったんだね」と言い換えると、話の内容を整理しつつ、子どもが「それが言いたかった」と感じやすくなります。
「明確化」は、わからない部分を曖昧にせず、確認することです。「その時、誰とどんなふうにけんかしたの?」と質問することで、子どもも自分の話を振り返りながら整理できます。
「要約」は、話の内容を簡潔にまとめて、子どもの理解と自分の理解が一致しているかを確認する作業です。「今日は友達に嫌なことを言われて、学校に行きたくない気持ちになったんだね」と一度まとめると、子どもも「ちゃんとわかってもらえた」と安心できます。
これに加えて、言葉以外の非言語コミュニケーションも大切です。例えば、子どもの目を見て、ゆっくりとうなずき、身体を相手の方へ向けるなど、姿勢や表情から「あなたの話を聞いています」というメッセージを伝えるということです。特に、おへそを子どもに向けて座ると、よりオープンで受け入れる姿勢になります。スマホや家事の手を止めるなど、子どもが話しやすい環境をつくることも忘れないようにしたいポイントです。
終わりに
忙しい毎日の中で、親が手を止めて子どもの話を真剣に聞くのは、現実的には簡単なことではありません。特に子どもが小さいうちは、大人にとっては「たいしたことじゃない」と思えてしまい、ついないがしろにしたり、後回しにしたりしてしまうこともあります。ただ、夫婦やパートナー同士の関係でも同じですが、どんなに小さな話でも「聞いてもらえた」という体験の積み重ねが、子どもの心に大きな安心感を育てます。
特別な時間を用意しなくても、お風呂や送り迎えの時間、寝る前などで大丈夫です。できる時に、ほんの数分だけでも子どもと向き合って話を聞いてみてください。その小さなひとときが、子どもにとって安心できる親の存在を強く感じられる大切な時間になります。
PROFILE
島村華子
オックスフォード大学修士・博士課程修了(児童発達学)。日本人で唯一の、モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育の二つを司る研究者。現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わりながら、日本でも教育・子育てについて、親や教育者に寄り添ったアドバイスを発信している。著書『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て(主婦の友社)』『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』『親子でできる モンテッソーリ教育とマインドフルネス(創元社)』SNSでもホットな情報を発信中!
●X:@hana_shimamura
●インスタ:@hanako_shimamura_phd

Kids Well-being VOL.22(2025年夏号)より転載
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